"Ole and Trufa" について
                                                
この物語はIssac BSinger によって書かれた “The story of two leaves” からの抜粋です。と言っても全体の物語は “Ole and Trufaに十数行の前文が加わっただけの短編です。

 

この物語については現在も分からないことが多く、Singerのどの書に掲載されているのかも、どのようにして日本に紹介されたのかも不明です。私とこの短編との出会いは10年程前になります。当時、「英語会話」を聴いていたのですが、注釈付きで「英語会話」のテキストに載っていたこの物語を読み、非常に感動して英文をタイプで打っておきました。そして7年程前に英語のレッスンの教材にこの物語を使ったところ、5人の御婦人の共感を呼びました。以来今日もなお、我が心の琴線に触れた書として愛読しております。

 

Ole Trufa 2枚の葉の名前で、擬人化して、2人の愛の深淵さが爽やかなタッチで描かれていて読む者を魅了します。老いても、なお、みずみずしい情感と優しさを失わずどこまでも愛に徹する2枚の葉の物語。まだ和訳されていないせいか、英語に接する者のみが味わえる作品に留まっていることはとても残念です。

 

ぜひ全文からこの物語を読み味わって欲しいところですが、ここでは物語の要約のみを日本語で紹介します。

 

 

 

オーリーとトルーファー (2枚の葉の物語より)

アイザック・B・シンガー著        要約

 

物語は、「他の葉はみな散ってしまったのに、木の梢でたくさんの日光を浴びていた葉が2枚だけ残っていました。1枚はオーリーという名前で、もう1枚はトルーファーという名前でした。」で始まります。「彼らは冷たい雨、寒い夜や木枯らしにも耐えて生き残りました。その訳は彼らにもよく分かりませんでした。」が、それは彼らがお互いに抱いている堅い愛の力であると信じていました。

 

雨、風、あられの厳しい自然条件の中で2枚の葉だけが最後まで生き残った力こそ「愛」であると以下の会話は私たちを説得させます。

 

 

「君のいない人生なんて意味ないよ! 君が散るなら、僕も散るよ!」とのオーリ―の言葉に、「だめよ!オーリー!そんなことしたらだめよ! 葉がそこに居られる力がある限り手を離してはいけないのよ!」との返答に、「それは君が僕と一緒に居てくれたらのことだよ!」「昼には君の美しさを讃え、夜には君の芳しさを心の奥深く感じる。木に僕だけが残れっていうのかい! 絶対にいやだ!」と、さらに素晴らしい会話は続きます。

 

「オーリー、あなたの言葉は素敵だわ。でも本当のことではないわ」「私がもう可愛くなんかないこと、分かっているでしょう。ごらんなさいよ、こんなに皺だらけになってしまって! 私の体は乾ききってしまって、鳥たちの前でも恥ずかしいわ。鳥たちは私のことを哀れんでいるようだわ。時々、鳥たちが私の皺皺を見て笑っているようにも思えるのよ。私はもう、可愛さも美しさもみな失ってしまったのよ。たった1つだけ残されているとすれば、あなたへの愛だけよ。」

 

「それで十分ではないか!愛の力は何よりも気高く何よりも素晴らしい!」とオーリーは語気強く言った。「僕たちがお互いに愛し合っている限り、ずっとここにいるんだよ。風だって、雨だって、嵐だって僕たちを引きちぎることなんてできないよ。トルーファー、よくお聞き:今ほど、僕は君を愛したことはないよ。」

 

「オーリー、なぜ? なぜなの? 私はもうすっかり黄色くなってしまったのよ」

 

「緑が美しくて黄色が美しくないなんて誰が決めたんだい。どんな色だってみな等しく美しいよ」

 

長い引用ですが、この物語の要ですので、ぜひ味わって欲しいと思います。

 

 

この直後、オーリーは一陣の風によって枝から引きちぎられました。物語の後半では、木に取り残されたトル―ファーの悲しみと孤独の戦いが描かれ、やがてトル―ファーも静かなまどろみの中で木から落とされました。

 

ここではシンガーの人生観、宇宙観が如実に現れている個所を引用して私の要約を終了したいと思います。  

 

「今はもう、恐れや心配はみな消えてしまいました。それは彼女が以前に感じていたものとはまるで違う認識でした。彼女は今、自分が風の気まぐれに左右されない葉であること、宇宙の一部であることを知りました。」

 

「彼女の隣にはオーリーが居り、これまで気付かなかった愛でお互いに向き合っていました。その愛は偶然や気まぐれに左右されるものではなく、宇宙そのものと同じくらい力強く永遠のものでした。彼らが4月から11月にかけて日夜ずっと恐れていた死の恐怖は救いに変わったのです。」

 

「そよ風が吹き、オーリーとトルーファーは空中に舞い上がり、解放されたものだけが知る喜びに満ちて舞い、永遠に結ばれました。」 

                                                      
                           
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