鳩山政権に不安                                                                             2009/10/02

―経済音痴の民主党―

 

830日の衆議院選挙で勝利し、鳩山民主党政権が誕生した。

政権交代した鳩山政権に国民は高い支持率を与えているが、おぼつかない政権運営能力を懸念し、不安を感じているのは私だけではないだろう。

 

鳩山内閣には、景気回復のビジョンも経済成長戦略も見えてこない。

日本経済は、急下降からやっと水平飛行に戻ったのに、鳩山内閣は、麻生内閣が編成した補正予算の一部を凍結し、子供手当など公約した政策の財源に充てるという。そんなことをしたら、政策の空白が生じ、景気腰折れの引き金を引きかねない。

 

民主党の政策ブレーンといわれる榊原英資は、「補正予算を凍結すれば公的需要が減少し景気の二番底に陥りかねない。このままだと鳩山不況になる恐れがある」と述べている。景気が回復せず、「鳩山不況」に陥ると企業は更なるリストラを迫られ、かろうじて留まっている企業内失業者をも放出することになり、5.5%という戦後最悪といわれる失業率がさらに14.3%にはね上がる。

 

鳩山内閣の閣僚が動き出した途端、株式市場が敏感に反応し、銀行株が続落、円相場が急騰し、928日の東京市場で株価が大幅安となった。引き金の一つは、亀井金融相が打ち出した、返済猶予制度(モラトリアム)構想である。亀井氏の構想は、中小・零細企業の返済について「最長3年間の支払い猶予制度を法制化する」とした国民新党の政権公約である。この制度の法制化には、閣内不一致の感はあるが、亀井氏は、「連立3党の政策合意」だと主張、強気の姿勢である。

 

この構想には、マスコミ各紙が猛反発した。920日付・産経新聞「返済猶予構想 『禁じ手』が経済活力を奪う」、925日付・読売新聞「借金返済猶予 金融に国が介入する状況か」、928日付・朝日新聞「返済猶予―亀井大臣に再考を求める」等。

 

各紙が述べているように、返済猶予の法制化は、私的な契約である金銭貸借に国家権力が踏み込むことであり、自由経済では禁じ手である。麻生政権は危機対策として公的金融機関も活用しつつ信用保証や融資に取り組んできた。これらを拡充する中で銀行にもさらなる努力を求めるのが正しい政策ではないか。

 

株価続落のもう一つの要因は、藤井財務相の「円高容認」発言である。

藤井財務相は916日午後、最近の円高傾向について「輸出産業への悪影響で円高反対という考えはきわめて一方的。円高の良さは非常にある」と発言。928日朝、円相場が1ドル=88円台に突入した際も「今の傾向は異常でも何でもない」と明言。もう一段の円高もあり得るとの観測が投機筋などに広がった。午後になって藤井氏は「やや一方的に円高に偏りすぎている」と修正したものの、「円高論者」とのイメージは市場にくすぶり続けた。

 

929日付・読売新聞社説は、「世界の金融当局トップは望ましい為替水準や介入方針など手の内を明かさないのが常だ」と批判している。藤井氏は金融当局のトップとして常軌を逸脱した人物ということになり、東京市場のイメージを損なったことになる。

 

理解し難いのは、藤井氏の持論、「円高容認」論である。経済がグローバル化し、世界経済が競争で鎬を削っている今日、企業が輸出依存の経営体質を変えることは不可能である。現在の景気拡大が輸出に依存している構造である以上、円高による輸出企業へのマイナスの影響を懸念しない「円高容認」論を振りかざす藤井氏に、果たして財務大臣としての資格があるのだろうか。

 

さらに、「円高の良さは非常にある」との発言に至っては、デフレ傾向にあるに今日の日本経済を何と心得ているのだろうか。円高で安い輸入商品と競争しなければならない国内生産品を扱う業者は採算が取れず倒産するだろう。

 

日本経済は輸出で日本の産業を牽引し、利益を上げ、国内に還元して、成長し繁栄してきた。今もその構造に変わりない。

 

鳩山首相は、「友愛主義」の理想論・夢物語に酔いしれて、国内の合意の無いまま、温室ガス25%削減を世界に宣言した。「90年比25%減」は、05年比に直すと30%減となり、米国の14%、EUの13%減と比べ、突出している。経済活動を停滞させずに、身の丈知らずのこの数値をどう実現するのだろうか。

 

この不況期に、最低賃金1000円以上とか、製造業の派遣禁止、温室ガス25%削減、経済対策の予算執行のさし止め、「円高容認」論等、日本の主要大企業が外国に逃げるのが目に見えている。日本の雇用はどうなるのだろうか。

 

景気対策、経済成長戦略で無策、経済音痴の民主党鳩山政権に申し上げたい。

日本を沈没させないで欲しい!!